アスリート・スポーツ選手の引退理由とは?年齢や体力の衰えだけじゃない!

スポーツ選手にとって、現役引退はひとつの人生を終わらせると言われるほど大きな決断です。

そのため、アスリートであれば誰もが現役として出来る限り競技を続けたいと願うものです。

しかし、理由は様々ですが引退の時期は必ず訪れます。

今回は、アスリート・スポーツ選手の主な引退理由についてデータや有名アスリートの実例をもとに現状を把握し、それをもとにセカンドキャリアがどうあるべきかを検討したいと思います。

スポーツ選手が現役から引退する理由とは?

スポーツ選手の引退理由については「データからみるアスリート・スポーツ選手のセカンドキャリアの現状」の記事でも触れました。

アスリートの引退理由として多いのは、「仕事(セカンドキャリア)を優先するため」、「年齢による体力的な問題(体力の衰え)を感じたため」、「自己の成績に満足したため」、「怪我をしたため」、「競技を楽しめなくなったため(モチベーション)」、「金銭的な問題が生じたため」、「競技力不足を感じたため(戦力外など)」、「その他(結婚・妊娠、他のことをやりたくなったなど)」が挙げられます。

これらの理由単体で現役引退を決めることもあれば、いくつかの理由が重なって現役引退を決めることもあります。

では、それぞれの理由について詳しくみていきましょう。

スポーツ選手・アスリートの引退理由:仕事・セカンドキャリアを優先するため

アスリートとして十分に生計を立てられるのは、プロ野球選手やJリーガーなどのプロスポーツ選手や世界的に活躍する選手に限られます。

企業の実業団やマイナースポーツに取り組むアスリートの多くは、基本的に収入を得るための仕事(ライスワーク)と競技を平行しなくてはいけません。

そのため、アスリートの多くは引退後も現役時代の貯金で生活を出来るというわけではないので、引退後すぐに社会へ出て働き続ける必要があります。

だから、就職や転職が可能で社会での活躍が見込める年齢のうちに引退を決意するのです。

スポーツ選手・アスリートの引退理由:年齢による体力の衰えを感じたため

アスリートにとって年齢による体力の衰えは、最も競技レベルに関係する要因のひとつになります。

もちろん、競技レベルが落ちればいかなる理由があっても、競技スポーツの世界にはいられなくなります。

スポーツ選手の平均引退年齢は30歳前後と言われています。

Jリーグの三浦知良選手や中山雅史選手、プロ野球の山本昌投手やイチロー選手のように40~50代でもプロの第一線で活躍する選手もいますが、ほとんどの選手は30代半ばまでに引退を迎えるでしょう。

スポーツ選手・アスリートの引退理由:自己の成績に満足したため

アスリートはそれぞれに成績の目標を設定しています。

目標を達成したら次の目標を立てるというサイクルを何度も繰り返し、競技の世界でより高みを目指していきます。

しかし、何度も何度もそのサイクルを繰り返すうちに先が見えなくなったり、サイクルを回す大きなエネルギー(精神的・肉体的)が足りなくなったりすることがあります。

つまり、どちらかの理由をもって自分が満足できる成績(それより上を目指したいと思わない成績)にいきつくことで、現役を引退するという決断をするのです。

スポーツ選手・アスリートの引退理由:怪我をしたため

心身共に酷使するアスリートにとって、怪我はつきものです。

なかには手術が必要になるものもあり、リハビリを含めると長期に渡り競技に復帰できないケースもあります。

もちろん、そのような怪我自体で競技復帰が不可能な場合もありますが、多くの場合はこの長期間にわたる治療やリハビリで精神的な限界を迎えることが多いです。

長期間調整して復帰したもののすぐに再発してしまったり、ブランクが原因で活躍できなかったりすることが引退の決め手になる選手も少なくないでしょう。

スポーツ選手・アスリートの引退理由:競技を楽しめなくなったため(モチベーション)

アスリートは、そもそもその競技が好きもしくは得意でその道に進みます。

しかし、成績を求められるプロの世界で戦い続けるうちに精神的にきつくなってしまい、その競技を好きではなくなってしまうケースは少なくありません。

競技の成績に関わらず競争を強いられる環境に身を置くことで伸び伸びとプレーできず、バーンアウト(燃え尽き症候群)してしまうのです。

この場合は、引退後にまた競技の楽しさに気付いたタイミングで復帰するケースもあります。

スポーツ選手・アスリートの引退理由:金銭的な問題が生じたため

アスリートとお金(活動費)の問題はとてもシビアです。

特にマイナースポーツの選手や実績のないプロスポーツ選手は、スポンサー企業が見つからなかったり、賞金が安かったりと遠征などの活動費を賄うことが難しくなります。

また、冬季スポーツの選手は活動に多額の費用がかかるため、最初からお金の問題がついてきます。

そのため、活動費を支払うことができず、引退するもしくは活動を制限されるアスリートは少なくありません。

ただし、最近はクラウドファンディングなど資金調達の方法が多様化しているので、金銭的な問題はある程度緩和されるのではないかと思います。

スポーツ選手・アスリートの引退理由:競技力不足を感じたため(戦力外)

競技スポーツの世界は実力社会です。

プロとして実力が足りないのであれば、チームスポーツであれば戦力外になりますし、個人スポーツであれば成績が出ず活動を続けることが難しくなります。

このような場合は、通用しないと感じて自ら引退をする人もいれば戦力外などの理由で強制的に引退に追い込まれる人もいるでしょう。

スポーツ選手・アスリートの引退理由:その他(プライベートなど)

アスリートとして以外の人生に目を向け、現役を引退する人もいます。

特に妊娠出産などの適齢期がある女性アスリートは結婚を機に引退するケースが多いです。

また、自分の人としての人生に焦点を合わせているアスリートは年齢などに囚われず、大学に入り学び直したいから、他のやりたいことをしたいからといった理由で電撃的に引退をします。

アスリートである前に人であるという考え方をしている人はこのような決断をするのでしょう。

有名アスリートの引退理由は?本音はどこにあるのか…

ここまで、アスリート・スポーツ選手の一般的な引退理由についてみてきました。

では、実際に誰もが知っているような有名アスリートはどのような理由で競技からの引退を決断したのでしょうか?

有名アスリートの引退理由:イチロー(野球選手)

イチローさんは、日本のプロ野球とアメリカのメジャーリーグベースボールで活躍した世界を代表する元野球選手です。

特に最後の所属チームとなったシアトル・マリナーズとは生涯契約を結ぶほど信頼は厚く、現役引退後も会長付き特別補佐兼インストラクターとして現場復帰することが決まりました。

引退理由としては、「マリナーズ以外に行く気持ちがなかったのが大きかった」と話しています。

また、「引退というより、クビになるのではないかはいつもありましたね。ニューヨークに行ってからは、毎日そうでしたね。マイアミもそうでしたけど。ニューヨークは特殊な場所です。マイアミも違った意味で特殊な場所です。毎日そんなメンタリティで過ごしていたんですね。クビになるときは、まさにそのときだろうと思っていたので、しょっちゅうありました。」と今の実力では戦力にならないということを悟っていたのでしょう。

つまり、もう選手として野球を続けることは難しいと悟った上で、イチローさんとしてはマリナーズで野球人生を終えるという決断をしたのだと思います。

有名アスリートの引退理由:浅田真央(フィギュアスケーター)

浅田真央さんは、ジュニア時代から期待され世界大会で金メダルを獲得するなど活躍した世界を代表するフィギュアスケーターです。

2014年に活動休止を発表し、2015年に平昌オリンピックを目指して復帰をしましたが、2017年には正式に引退を決めました。引退後は、プロスケーターとしてだけでなく多方面で活躍しています。

引退理由としては、「目標が消え、選手として続ける自分の気力もなくなりました」と話しています。

実際に本人のブログでは、「ソチオリンピックシーズンの世界選手権は最高の演技と結果で終える事ができました。その時に選手生活を終えていたら、今も選手として復帰することを望んでいたかもしれません。実際に選手としてやってみなければ分からない事もたくさんありました。復帰してからは、自分が望む演技や結果を出す事が出来ず、悩む事が多くなりました。そして、去年の全日本選手権を終えた後、それまでの自分を支えてきた目標が消え、選手として続ける自分の気力もなくなりました。このような決断になりましたが、私のフィギュアスケート人生に悔いはありません。これは、自分にとって大きな決断でしたが、人生の中の1つの通過点だと思っています。この先も新たな夢や目標を見つけて、笑顔を忘れずに、前進していきたいと思っています。皆様、今までたくさんの応援、本当にありがとうございました」と書いているように、選手として悔いなくやりきれたから引退を決めたのでしょう。

有名アスリートの引退理由:松井秀樹(野球選手)

松井秀樹さんは、日本のプロ野球とアメリカのメジャーリーグベースボールで活躍した世界を代表する元野球選手です。

現役引退後もニューヨーク・ヤンキースにてGM付特別アドバイザーに就任し、指導者としてもマイナーのコーチとして若手の育成に尽力しています。

引退理由としては、「戦力外通告を受け、自分がチームの力になれないのであれば意味がないと感じたから」と話しています。

本人も会見で「またメジャーを目指すか、日本に戻るか、辞めるか。3つしかなかった。覚悟を決めてこっち(米国)へ来た以上、戦力外になったということは、自分がチームの力になりきれない気持ちになった。やりたくても、力になれないのであれば、やっても意味がない。シンプルに、そういう感じでした。」と言っているように、今の実力では戦力にならないと悟ったのでしょう。

つまり、松井秀喜さんは、年齢や怪我による競技力の低下を理由に現役引退を決めたのだと思います。

有名アスリートの引退理由:伊達公子(テニスプレーヤー)

伊達公子さんは、世界ランキング4位(日本人最高位)を記録した日本・世界を代表する元テニスプレーヤーです。

1996年に25歳の若さで現役引退を発表したものの、2008年に37歳で現役復帰し、2017年に2度目の現役引退を発表しました。引退後は、大学院に通いながら解説者としても活躍しています。

引退理由としては、1度目は「満足の行くテニスができたから。そろそろそういう時期だと思うから。」、2度目は「もう(プロのトップ選手には)ついていけないのかなと思ったから」と話しています。

しかし、実際は1度目の引退の際は「テニスが楽しいというのはプロになって最初の頃だけで、テニスが嫌でした。」と後に本音を語っており、2度目の引退とは違うものであることが伺えます。

1度目の引退後に「テニスの素晴らしさ」に気付き、チャレンジすることを目標に復帰し、その最低限のラインとして設定した世界ランキング100位前後にいられる実力ではなくなったとき2度目の引退を迎えたのです。

つまり、伊達公子さんは2度の引退をそれぞれ違う理由で迎えた数少ない人と言えるでしょう。

有名アスリートの引退理由:中田英寿(サッカー選手)

中田英寿さんは、日本やイタリアのサッカーリーグで活躍した世界を代表する元サッカー選手です。

2006年のドイツワールドカップ1次リーグ敗退直後に引退を発表し、現役引退後は世界各国を旅し、世界で16人目となるFIFA親善大使に就任しました。

引退理由としては、「自分がサッカーをやってて、好きでやってるわけで、その“好き”の部分が楽しめなくて、その時期も長く続いてて。だったらここは一旦休んだほうがいいな」と思ったからと話しています。

つまり、中田英寿さんは競技を楽しむことができなくなったから引退を決断したといえるでしょう。

有名アスリートの引退理由:吉田沙保里(レスリング選手)

吉田沙保里さんは、オリンピック3連覇や世界選手権16連覇を達成するなど世界を代表する元レスリング選手です。

東京オリンピックを前に引退を発表し、現役引退後は指導者として東京オリンピックでの活躍を目指す後輩を指導しています。

引退理由としては、「レスリングはすべてやり尽くした」からと話しています。

引退会見では、「東京五輪に出場したい思いとリオで銀メダルに終わってしまい、日々迷いながらここまで来た。若い選手たちが世界の舞台で活躍する姿を見て、自分自身と向き合ったとき、レスリングはすべてやり尽くした」と語っています。

つまり、吉田沙保里さんは東京オリンピックに出場したいという思いを抱いていたものの、若手の台頭を目の当たりにしてレスリングに対して未練なく引退を決意したのだと思います。

有名アスリートの引退理由:宮里藍(ゴルファー)

宮里藍さんは、日本・アメリカのツアーで活躍し、世界ランキング1位にもなった日本を代表する元ゴルファーです。

2017年に引退を発表し、現役引退後は結婚してイベントなどに参加しています。

引退理由としては、「モチベーションの維持が難しくなった」からと話しています。

会見では、求めている理想の形からは程遠くなかなか戻ってこなかったことで、モチベーションを保てなかったと語っています。

つまり、宮里藍さんはプロとして戦う高いモチベーションを保つことが難しく引退を決意したのだと思います。

引退理由からみるアスリートのセカンドキャリアのあり方とは?

このようにアスリート・スポーツ選手の引退理由をみてみると、引退後のセカンドキャリアがどうあるべきかも自ずとみえてきます。

僕は、一貫してアスリートはデュアルキャリアの考え方をすべきだと主張しています。

これは、アスリートの引退理由をみても同じ主張をするでしょう。

デュアルキャリアとは、常にアスリートとしてのキャリアと人としてのキャリアを意識して選択と行動をするというキャリアの考え方です。

そうすることで、アスリートとしてのキャリアにとっては「競技しかやってこなかった自分から競技を取ったらどうなるのだろうか…」という引退後の不安を払拭し、安心して心技体を追求でき、人としてのキャリアにとってはアスリートにしかできない特別な経験をもとにライフスキルを高めることができるでしょう。

また、知識不足のまま起業して破産をしたり、犯罪や不祥事を起こしたりと悲惨な失敗をして、アスリートとしての成功から一転して転落人生に陥るというケースも減らすことができるでしょう。

このようなキャリアの考え方をしておくことで、どのような理由で競技を引退することになったとしても、その出来事をフラットに受け入れることができるだけでなく、その後のキャリア形成にもより良い影響を与えられるでしょう。

現役アスリートとしての人生の隣に1人の人間としての人生が流れていることを理解し、常に2つのキャリア・人生を生きる意識付けをしておけば、セカンドキャリアを歩み始めたときにも、また指導者・ビジネスマン・経営者等としてのキャリアと人としてのキャリアの2つを生きることができ、来るサードキャリア、フォースキャリアに備えることができるのです。

このように、スポーツ選手やアスリートは後のキャリア形成も含めて、デュアルキャリアを意識することが最も重要なのです。

まとめ

今回は、アスリート・スポーツ選手の引退理由について詳しくみてきました。

幼い頃から長い間打ち込んできた競技から離れるというのは、どのような理由であったとしても、大なり小なりアイデンティティの喪失につながります。

だから、よくアスリートが「自分はスポーツしかやってこなかったから…」と引退後のセカンドキャリアに不安や喪失感を感じるのは無理もありません。

それを少しでも緩和するためにはアスリートとしての人生と人としての人生を両立し、お互いがより良くなるように共鳴することが重要です。

そうすることで、アスリートとしても人としても満足いく人生を送れると僕は思うのです。

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