倒産・破産・不祥事・犯罪!スポーツ選手・アスリートの引退後の悲惨な転落人生

現役引退後に就職先企業が見つからない…。

競技を辞めたらやりたいことがない…。

これらの悩みは決して軽いものではありません。

しかし、スポーツ選手のセカンドキャリア問題はただ単に次の仕事が見つからないということだけではありません。

引退後に起業したものの経営難に陥り倒産。

不動産や株の投資詐欺にあい破産。

問題行動・不祥事・犯罪を起こして逮捕。

セカンドキャリアに失敗し、このような悲惨な転落人生を歩む元アスリートは決して少なくありません。

これこそがスポーツ界のセカンドキャリア問題と言えるでしょう。

今回は、スポーツ界が抱えるアスリート・スポーツ選手のセカンドキャリアの失敗例を挙げ、その原因と対策を考えたいと思います。

倒産・借金・破産・不祥事・犯罪!スポーツ選手のセカンドキャリアの失敗例

世界では、年棒1億円以上を稼ぐアスリートでも高い割合で破産するという話があります。

平均年棒2億円のNFL(アメリカンフットボール)では引退した選手の70~80%、平均年棒6億円のNBA(バスケットボール)では引退した選手の60%が破産するというデータが出ています。

また、日本でも元スポーツ選手の不祥事・犯罪(違法薬物、わいせつ、賭博、暴行など)が後を絶ちません。

日本のポータルサイトが全国の10代~60代の男女1,755名にスポーツ選手の引退後について聞いた調査では、18.2%が「犯罪者になりやすいと思う」と回答しています。

もちろん、元アスリートという注目の集まりやすい立場だけに過剰な報道をされ、印象操作されている部分もあるとは思いますが、確かに問題行動を起こすイメージはあります。

では、実際にどのような経緯で転落人生へと落ちていってしまったのか、数件をピックアップして例を挙げておきたいと思います。

スポーツ選手の引退後のセカンドキャリア失敗例 伊良部秀輝(犯罪・破産・自殺)

伊良部秀輝さんは、1987年から日本・アメリカのプロ野球界で日本を代表する投手として活躍しました。

引退後は、2005年にアメリカのグリーンカード(外国人永久居住権)を取得し、カリフォルニア州ロサンゼルスにて高校時代の友人との共同経営の「SUPER UDON」(うどん店)を開きました。

開店直後は元メジャーリーガーの伊良部秀輝の店ということもあり人気が出ましたが、2007年に土地の契約が切れると同時に廃業しました。

その後、2008年にバー店員に暴力をふるうなどの暴行事件を起こして逮捕され、ニュースになりました。

2009年には5年ぶりにアメリカ・日本の独立リーグに復帰したものの、怪我の影響で2010年に引退を迎えることになりました。

また、引退直後にはロサンゼルスで飲酒運転をし2度目の逮捕を経験しています。

そして、最後は2011年に自宅で泥酔状態で首つり自殺をし、若くしてこの世を去りました。

スポーツ選手の引退後のセカンドキャリア失敗例 小川博(犯罪 強盗殺人)

小川博さんは、1984年から日本のロッテ・オリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)で投手として活躍しました。

引退後もロッテ球団に残り1993年から1999年までトレーニングコーチ、2000年からは編成担当の球団職員を務めたものの、借金などのトラブルを理由に退職しました。

その後は、運送会社などのアルバイトを経て、2003年には産業廃棄物処理会社に就職し、営業部長を務めていました。

しかし、2004年に会社会長宅で強盗殺人「元千葉ロッテマリーンズ投手強盗殺人事件」を起こして逮捕・起訴され、無期懲役の判決を受けました。

また、逮捕された際に、離婚した先妻への慰謝料などにより消費者金融へ約1000万円の借金を抱えており、再就職後の2003年に自己破産していたことも明らかになり、再婚後もヤミ金融数社から借金していたことも発覚しました。

現在も服役中です。

スポーツ選手の引退後のセカンドキャリア失敗例 清原和博(犯罪 暴行、違法薬物)

清原和博さんは、1985年から2008年まで日本を代表するスラッガーとして活躍しました。

引退後は日刊スポーツ(大阪本社)と専属評論家としての契約を交わし、野球評論家・タレントとしての活動をスタートしました。

また、野球のキャリアとしては「将来的にまず二軍監督となってキャリアを積み、そして最終的には一軍監督として日本一になりたい」とも語っていました。

しかし、2014年の薬物疑惑騒動・離婚を経て、2016年に自宅マンションにて覚せい剤取締法違反現行犯で逮捕され、裁判では懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決が下されました。

現在は、周りの人の力を借りながら、薬物依存治療を継続しています。

スポーツ選手の引退後のセカンドキャリア失敗例 内柴正人(犯罪 わいせつ)

内柴正人さんは、引退する2010年まで日本を代表する柔道選手として活躍しました。アテネオリンピック・北京オリンピックでは、金メダルを獲得しました。

引退後は、旭化成を退社し、現役時代の2011年より女子柔道部コーチを務めていた九州看護福祉大学の客員教授に就任しました。

しかし、2011年に女子部員に対するセクハラ疑惑が報じられ、大学から懲戒解雇処分を受け、準強姦容疑で逮捕・起訴されました。

その後、離婚や5年の実刑判決を受け、服役をしました。

現在は、仮釈放中で柔術のアマチュア選手、キルギス共和国柔道総監督として活動中です。

スポーツ選手の引退後のセカンドキャリア失敗例 元木大介(倒産)

元木大介さんは、1990年から2005年までプロ野球選手として活躍しました。

引退後は、野球解説者やタレントとして活動する傍ら、2010年からはラーメン店(2店舗)の経営に乗り出しました。

しかし、2店舗ともにあっという間に閉店に追い込まれることになりました。

テレビ番組「しくじり先生」などで当時の内情等を話していますが、「事業失敗については場所選びの浅はかさや無計画だった開店準備、苦情を言う客やネットの酷評などと向き合えなかった」と語っています。

現在は、読売ジャイアンツの一軍内野守備兼打撃コーチを務めています。

スポーツ選手の引退後のセカンドキャリアでのトラブル一覧

  • 小林繁(破産)
  • 香川伸行(破産)
  • ルーカス・ニール(破産)
  • 東尾修(犯罪 賭博)
  • 柴田勲(犯罪 賭博)
  • 江夏豊(犯罪 違法薬物)
  • 杉山直樹(犯罪 わいせつ)
  • 足立亘(犯罪 違法薬物)
  • 藤王康晴(犯罪 暴行)
  • 野村貴仁(犯罪 違法薬物)
  • 前川勝彦(犯罪 交通違反)
  • 塩谷和彦(犯罪 詐欺)
  • 福田聡志(犯罪 賭博)
  • 笠原将生(犯罪 賭博)
  • 松本竜也(犯罪 賭博)
  • 高木京介(犯罪 賭博)
  • 堂上隼人(犯罪 わいせつ)
  • 山根善伸(犯罪 詐欺)
  • チョ・ソンミン(犯罪・倒産・自殺)
  • 高野光(自殺)
  • 奥浪鏡(犯罪 詐欺、交通違反、わいせつ)

※この一覧は筆者がインターネット・書籍を調査したものです。(順不同)

なぜスポーツ選手引退後のセカンドキャリア問題はなくならないのか?

ここまで、引退したスポーツ選手の犯罪・不祥事・破産・倒産などのセカンドキャリア問題の実態をみてきました。

このような失敗例が数多くあるにもかかわらず、元アスリートの悲惨な転落人生が後を絶たないのはなぜなのでしょうか?

この問いに対しては、アスリートのセカンドキャリア問題について元陸上選手の為末大さんが述べている意見がとても参考になります。

なんでセカンドキャリア問題が起きるのか。これにはまず1つ、文化的な要因が大きいんですね。

オリンピックに出るアスリートが「同時に医師免許を獲得するために勉強してます」ということが、アメリカの選手で実際にありました。

しかし、日本の選手でそれをやるとけっこう「日本を代表する選手が競技に集中しなくてどうするんだ?」というような協会への批判があったりするという背景があります。なので、日本の選手の場合、デュアルで進むというのが社会的にはちょっとやりにくくなっています。

また、けっこう目の前のことにやっぱりどうしても一生懸命になるんですね。IOCは15~17歳までが選手が社会貢献に目覚める大事な時期で、その後はもうほとんど周りが見えなくなるというふうに定義をしているんですけど。

そういう意味で、高校生を過ぎたあとは、もう選手は(競技に)没頭してあとは引退までいってしまうということがあると思います。引退した途端に急に自分で「あれ、次なにやるんだっけ?」と、ハッと気がついちゃうということがあります。

2つの問題があります。1つは、アマチュア競技の場合は引退した時にお金がないので、なんとか働かなきゃいけないというのですぐ社会に出るんです。しかし、スキルがなかったりしていろいろ難しい点が多いわけです。

もう1つはアイデンティティの喪失の問題。これはたぶん最近で一番みなさんの記憶にあるのは清原(和博)さんとかがそうだと思うんですけど。次に自分をなにで定義していいのかがよくわからなくなるということがあります。

logme biz「スペシャルトークセッション『2020 年以後、アスリートはどう生きていくか。 – お金との新しい付き合い方 -』 #1/2
」より一部引用・抜粋

為末大さんは「なぜ日本のセカンドキャリア問題がなくならないのか?」という問いに対して、「社会の文化的な問題」、「個人の金銭的問題」、「個人のアイデンティティの喪失の問題」という3つの解を出しています。

まず、社会の文化的な原因として、日本のスポーツ界の「1つのこと(競技)に集中すべき」、「2足の草鞋なんてどちらも中途半端になるだけだ」という固定概念が強いため、デュアルキャリアやパラレルキャリアの考え方を実行しにくい環境にあることは確かでしょう。

また、個人的な原因として、引退直後から働いて収入を得なければ生活できないという金銭的な問題、人生を懸けて打ち込んできた競技を失うことによるアイデンティティの問題も確かに存在するでしょう。

つまり、日本では文化的に現役のうちに他のキャリアをスタートさせることへの風当たりが強いこと、またその風潮によって引退後の生活の金銭的・精神的な準備を十分に出来ないまま、社会に放り出されることがセカンドキャリア問題の根底にある原因だといえるでしょう。

どうすればスポーツ選手は引退後のセカンドキャリアでも成功を収められるのか?

では、どうすればこのような文化的・個人的な原因を抱えた日本のスポーツ選手のセカンドキャリア問題を解決することができるのでしょうか?

僕は、このような引退後のセカンドキャリアが内包する問題を解決するためには3つの方法があると考えています。

競技によって得られる人間的なスキルにフォーカスする。

競技スポーツに取り組むことで得られるのは決して競技スキルだけではありません。

高い目標を達成する過程で培った、忍耐力・完遂力・課題発見/解決能力・決断力などの「ライフスキル」もその1つです。

ライフスキルとは、「日常生活に生じるさまざまな問題や要求に対して、より建設的かつ効果的に対処するために必要な能力」であり、 簡単に言うならばよりよく生きるために必要な技術・能力・生活技能を意味します。

活躍しているアスリートは、良くも悪くも高い目標を目指し厳しい環境で鍛え抜かれ、他の人との激しい競争を勝ち抜いた人です。

つまり、その他の人よりも高いライフスキルを獲得しているといえます。言い換えるならば、多くのアスリートは普通の人よりもより良く生きる能力を持っているということです。

しかし、それを知らず(意識せず)に競技の結果に囚われ、「自分は競技しかやってこなかった…」とセカンドキャリアに不安を覚えるのです。

この問題を解決するためには、アスリートの意識はもちろん指導者が「結果至上主義」から脱却し、スポーツに取り組むことで得られる「ライフスキル」に重きを置けるようになることが重要です。

このあたりは結果を出さなくては協会からの強化費が落ちるなどの制度的な問題の解決も必要になってくるでしょう。

アスリートの引退とセカンドキャリアの間に”余白”を与える。

これは先ほどの引用でも取り上げた対談の中で為末大さんも述べていましたが、引退直後から働くという現状がセカンドキャリア問題を引き起こす1つの要因になっていると考えられます。

「金銭的に働かざるを得ないから」、「精神的になにかしなくていけないと焦りを感じるから」、「皆がそうしているから」など様々な理由があると思いますが、様々な面で準備が出来ていないうちに社会に出ることで、先に述べたような高いライフスキルを生かせていないのです。

そのため、高いライフスキルを持っている人間を生かしきれずに、社会的にも個人的にも損をしている状態なのです。

だから、競技引退からセカンドキャリアを始めるまでに空白の時間をつくれるように、社会的な仕組みや制度を整備する必要があるでしょう。

例えば、高いライフスキルを持つアスリートは、引退後ある一定期間は金銭的な補助と時間的な猶予を与えられるような支援制度をつくると良いでしょう。

最近は、日本最大のクラウドファンディングサービスであるCAMPFIREで月額課金制ファンクラブなどのサービスも始まっているので、このような仕組みをつかってアスリートの引退後からセカンドキャリアまでの金銭的な支援ができるプラットフォームが作れるのではないでしょうか。

セカンドキャリアの文化を変える”カリスマ”が登場する。

これまで、日本でデュアルキャリアが受け入れられるのは難しいという現実路線で解決策を考えてきました。

しかし、最終的には文化的・個人的な課題を乗り越えてデュアルキャリアの考え方が当たり前にならない限り、日本のスポーツ界におけるセカンドキャリア問題は解決しないでしょう。

そのためには、デュアルキャリアの考え方を実行し、アスリートとしてのキャリアも人としてのキャリアも成功する人物の登場が必要です。

なぜなら、時代や文化の変化には”カリスマ”の存在が不可欠だからです。

最近は、サッカーの本田圭佑選手や長友佑都選手を筆頭にデュアルキャリアを意識したパラレルキャリア(複業)に取り組むスポーツ選手が増えてきています。

彼ら・彼女らが選手を引退した後にセカンドキャリアでも成功を収めることができれば、それは日本のアスリートのセカンドキャリアの大きな変革につながるのではないでしょうか?

まとめ

今回は、アスリート・スポーツ選手のセカンドキャリア問題の現状、その原因と対策について考えてきました。

誰もが人生で何度も失敗や挫折を経験します。

だから、大切なのは失敗しないことではなく、失敗した後にどうするかです。

もしかしたら、アスリートは社会経験が少ない分、社会に出てから多くの失敗をするかもしれません。

でも、その失敗から学びを得て改善する能力は人一倍持っているのではないでしょうか?

それこそアスリートが持っている誰にも負けない強みなのです。

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