アスリート・スポーツ選手の引退後のセカンドキャリアにおける成功例

プロ・実業団・学生問わず、アスリートは競技引退後に長いセカンドキャリア生活が待っています。

しかし、いくらスポーツ界のセカンドキャリア問題が露呈しても、「辞めた後のことは引退が決まってから考えればいい」と思っている現役アスリートが大半です。

また、「スポーツ選手として活躍できる期間よりも、人生におけるそれ以外の期間の方が長いのだから、きちんと人生設計をすべきだ」と説教をされたとしても、実際になにも行動を起こすことなく目の前のアスリートとしてのキャリアに一点集中する人の方が多いでしょう。

本当にそれでアスリートとして、人として幸せになれるのでしょうか?

今回は、スポーツ選手・アスリートの引退後のセカンドキャリアの成功例をもとに、どうすれば引退後に現役時代以上に輝かしい成功を収められるのかを考えたいと思います。

スポーツ選手引退後のセカンドキャリアで成功を収めた人の共通点とは?

まず、それぞれの成功例を見ていく前に、引退後のセカンドキャリアにおける成功の定義を考えましょう。

ここでは、成功というのは幸せになることと定義したいと思います。

つまり、人それぞれ成功の形は違うということです。

たくさんお金を稼いで収入を得ることが成功の人もいれば、やりたいことをやるのが成功の人もいれば、人のためになることが成功の人もいれば、家族が幸せに暮らせることが成功の人もいれば…

つまり、人の数だけ幸せの形があり、成功があるわけです。

要するに、これから紹介する「セカンドキャリアの成功者」は一般化された幸せにつられることなく、セカンドキャリアにおいてもブレずに自分の幸せを追い求めた人たちです。

では、それぞれの物語を見ていきましょう。

※以下の成功例は筆者が書籍・インターネットで調査した情報をまとめたものです。

セカンドキャリアの成功者 奥村武博(プロ野球選手引退後公認会計士)

奥村武博さんは、1997年にプロ野球選手となったものの怪我による手術やリハビリに苦労し、2001年に戦力外通告をうけて現役を引退しました。

引退後は1年間打撃投手を務めたのちに飲食店で働き始めました。

しかし、「このままでいいのか?」という疑問がわき上がり、手にした資格の本の中から公認会計士を選び、勉強を始めました。

アルバイトと両立しながら9年間の勉強の末に公認会計士となり、監査法人に就職して税務業務に取り組んでいます。

また、現在は一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構の代表理事としても活動し、スポーツ選手のデュアルキャリアの啓蒙活動や資産形成のアドバイスなどを行っています。

セカンドキャリアの成功者 山川和風(プロボクサー引退後会社経営者)

山川和風さんは、プロボクサーとして活躍しながら個人事業主・会社経営者としてビジネスを起こして成功を収めています。

最初は個人事業としてフリーパーソナルトレーナーとして活動した後、法人化しヘルスケア・人材キャリアの事業を起こしています。

また、自身のデュアルキャリアの経験から複業・リモートワークなど多様な働き方を推奨し、アスリートのセカンドキャリア啓蒙活動も行っています。

引退した現在も安定した会社経営を続けています。

セカンドキャリアの成功者 高森勇旗(プロ野球選手引退後個人事業主)

高森勇旗さんは、2006年にプロ野球選手となったものの2012年に戦力外通告をうけて現役を引退しました。

引退後は、一般企業に就職をせず、データアナリスト・プログラミング・ライターなど得意を活かして個人事業主として活動を始めました。

戦力外通告をうけたときに「僕も、次に何をやっても絶対に上手くいくっていう自信がありました。やめた瞬間、よし、きたぞ!ここからだ!」、「やっとこれでやりたいことが全部できるなって思いました。海外旅行とか、現役時代は小さなことをするのも難しかったから。好奇心が強いから色んなことやりたかったので、解き放たれたような感覚でした。」と語っています。

現在も、自分の哲学を持って個人事業主として活動を続けています。

セカンドキャリアの成功者 柏原竜二(陸上選手引退後会社員)

柏原竜二さんは、箱根駅伝で山の神と呼ばれ一世を風靡し、東洋大学卒業後は富士通陸上部でマラソン選手として活動し、2017年に現役を引退しました。

引退後は、富士通に残り、企業スポーツ推進室に所属して強化運動部の支援活動、講演やランニングイベントを行っています。

恩師の「先のことを考えて臆するのではなく、全力で競技をやりなさい。ただ、引退後に向き合える人間でいなさい。やめた後を考えて今を疎かにするのではなく、やめた後を考えるからこそ今を思い切りやりなさい。」という言葉通り、前向きに引退を迎え、セカンドキャリアをスタートしました。

現在も、富士通社員として勤務を続けています。

セカンドキャリアの成功者 山口美咲(水泳選手引退後会社員)

山口美咲さんは、北京オリンピック・リオデジャネイロオリンピックに日本代表として出場し、2016年に現役を引退しました。

引退後は、星野リゾートに就職し、東京大手町の日本旅館「星のや東京」に勤務しています。

引退とセカンドキャリアについては、「引退はリオへの出場が決定した時点で決めていました。これから先の人生の方が長いと分かっていましたし、やっぱり競技人生を終えたあとのセカンドキャリアは不安でしたね。だから自分が何をしたいかイチから見つめ直そうと、ノートにやりたいことや好きなものを書き出していきました。」と語っています。

そのうえで星野リゾートで働くことが自らの価値をさらに高めることに繋がると考え、就職するに至りました。

現在も、星野リゾートの会社員として勤務を続けています。

引退後のセカンドキャリアで現役時代以上に成功するための秘訣とは?

ここまで引退後のセカンドキャリアで成功を収めた=幸せを掴んだ人のたちの例をみてきました。

引退したアスリートそれぞれがそれぞれの形で自らの幸せを手にしていることがわかったでしょう。

では、このような人たちに共通しているセカンドキャリア成功の秘訣について考えてみましょう。

スポーツ選手として現役を引退することに悔いがない

セカンドキャリアで成功を収めている人は、アスリートとしてのキャリアに依存せずにセカンドキャリアをポジティブに捉えているケースが多いです。

アスリートとしての成功に縋ったり、競技生活への未練があったりすると、セカンドキャリアはそれ以下のもの=ネガティブなものになってしまいます。

「あのときは良かった…」、「もっと出来るはずなのに…」とアスリートとしてのキャリアに終止符を打てなければ、セカンドキャリアの成功はないでしょう。

そのためには、アスリートとしてのキャリアを思う存分にやりきってからセカンドキャリアを迎える必要があるでしょう。

引退後のセカンドキャリアに目標や夢がある

セカンドキャリアで成功を収めている人は、競技以外にもやりたいことがあるケースが多いです。

競技だけに打ち込んでいると他の世界との接点が少なく、競技以外のやりたいことに出会うチャンスを失ってしまいます。

また、長い間アスリートとしての目標達成のために打ち込んでいると、アスリートである前に人であることを忘れ、人としての夢や目標を見失ってしまうこともあります。

そのため、最悪の場合はアスリートでない自分=生きている意味がないと感じ、バーンアウトしてしまうのです。

競技人生は自分の人生の一部であることを理解し、競技に打ち込みながらもそれ以外の世界に興味と接点を持つことが重要です。

そうすることで、競技以外の人としての目標や夢を抱くことができるでしょう。

現役アスリートのうちからセカンドキャリアの準備をしている

セカンドキャリアで成功を収めている人は、現役のうちから引退後の準備をしているケースが多いです。

最近はデュアルキャリアの考え方が広まってきているものの、「引退後の仕事や生活は引退が決まってから考えよう」、「アスリートなのだから今は目の前の競技生活に一点集中しよう」と考えているアスリートは少なくありません。

自分は不器用だから二足の草鞋なんて履けないから、とにかく今は競技一本で頑張るんだ!

この気持ちはとてもよくわかります。

しかし、先にも述べたようにアスリートはアスリートである前に人です。

つまり、アスリートとしてのキャリアをより良いものにするためにも、人としてのキャリアをより良くすることが重要なのです。

プロ野球選手・メジャーリーガーとして活躍した長谷川滋利さんも以下のように述べています。

アメリカは野球選手へのリスペクトが強い国ですので「マリナーズのハセガワが会いたいと言っている」といえば、多くの人は会ってくれたという背景もあります。その結果、「ああ、俺は野球以外のことにも興味あるし、挑戦してみたいな」と気付いてさらに勉強を重ねて、現役生活の最後のほうは「いつ引退しても大丈夫や」と思えるようになっていました。面白いものでそういう心境になってからは成績も上がったりもしました。

もちろん、アスリートとして競技だけに一点集中する方が良いタイミングもありますが、人として充実しているのが大前提であることを忘れてはいけません。

そのためにアスリートとしてのキャリアが終わるまえに、引退後の準備をして人としてのキャリアに不安なく夢を持てる状態にしておくことが大切なのです。

「自分にとってのセカンドキャリアとは?」という問いの答えを明らかにし、それぞれの準備することが重要です。

色々な人に会って話をしたり・聞いたり、必要な資格の勉強を初めてみたり、セカンドキャリア支援制度について調べてみたり、事業を始めてみたり、手段は人の数だけあるでしょう。

まとめ

今回は、アスリート・スポーツ選手引退後のセカンドキャリアの成功例についてみてきました。

セカンドキャリアに成功している人たちは、前向きな思考をしている人が多いと感じます。

現役のアスリートであることに執着することなく、競技・スポーツに感謝し、次の夢を抱く。

そして、それを叶えるために全力で生きる。

これこそセカンドキャリア成功の秘訣でしょう。

自分にとっての幸せのために生きることはアスリートに限らず全ての人にとって大切なことなのです。

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